「なーぁ、リオウ」
「近寄るな。うっとうしい」



寒さを紛らわすため、ふわふわと頼りなく落ちて来る雪景色によく映える黄金に顔をうずめれば、返ってくる不機嫌な声音。
あまりにも予想できたリオウの返答に俺は思わず笑いがこぼれてしまった。
リオウは、俺の態度が勘に障ったのだろう、ますます眉根を寄せて、疲弊の色を隠しもせずに呟く。
「・・・最近思うが、お前ますます気色が悪いぞ」
そんなリオウが面白くてまた笑う。
そうするといい加減イラついたのか、リオウは張り付いていた俺の体を強引に剥がす。
おぉっと、また怒った。楽しい楽しい。絶対カルシウム不足だぜ、お前。
リオウから離されたせいで、俺の体内に一気に冷風が吹き込んでくる。俺は寒さから身を守る為、コートに深く首をすくませた。
空を見上げれば、鈍灰色の淀んだ空から嘘みたいに白い結晶が、ちらりちらりと落ちてくる。
地面に溶けては積もり、溶けては積もりながら、世界を白く染めていた。





白が何もかも食い尽くしてく様は楽しくて面白くて、一方で腹立たしい。
黒さえも、不浄でさえも飲み尽くしちまう白は、この世界には全く不似合いだ。
この世界はおとなしく汚れた姿を晒して羞恥にもだえていればいいんだ。
けれど一方で世界が静かに崩壊していくようで、楽しくて愉しくて仕方ない。
嗚呼、このまますべてが滅びてしまえばいいのに。全てが無くなってしまえばいいのに。
この地面も、雪も、木も、明かりも、空も。何もかも。
そうすれば、ほうら、ここに立っている俺たち二人だけの世界だ。
もっともこの気高い王様がそんなイカれた事を望むとは到底思えないが。
小さなこの魔物が望んでいるのは、違う世界を支配する王の座と、小さな愛なのだから。
俺とお前だけの世界など、きっとお前には何の価値も無いんだろうな?リオウ。
「・・・嗚呼、でもそれはいいなぁ」
小さく、ふわふわと頼りない綿雪すらにかき消されるかどうかの声で呟く。
けれど隣に居たリオウにはさすがに届いたらしく、ひどく訝しげな瞳を向けられた。
「何だ?」
「いいや?なんでも無い」
静かに壊れてしまった、真っ白な世界に俺とリオウの二人きり。
嗚呼、なんて、限りなく理想に近い夢なことか!
「・・・本格的に大丈夫なのか、お前」
勝手にくつくつと笑い出した俺を見て、リオウは冷えた視線をよこす。俺は、もう一度リオウの輝く髪に頬をうずめた。
「嗚呼、寒い寒い」
わざとらしくそういってやると、リオウが大きく息をついたのが振動で伝わってくる。
もう勝手にしろ、と投げやりに呟かれ、俺は今度こそ遠慮なくリオウにすがりつきながら歩を進めた。





嗚呼本当にふたりきりになれたら

それはどこまで幸せな夢なのだろう!

だってお前を邪魔するものは誰も居ない、

だってお前を縛り付けるものは誰もいない、

俺とお前だけの限りない自由だ!










ラブラブっぽくないすかこのライムライト(爆笑)
バニキスはリオウが好きで好きで仕方ないんですって(オイ)
言ってしまえばそんな話なんです。すいません。