あの時、世界はお前を拒絶した。
その時、世界は俺達を断ち切った。
足が竦む。
声が引き攣る。
耳に響く、お前の叫びにすら、俺は動けない。
黄金の髪が。太陽に良く似たお前の姿が血で塗れる。
あの日からずっと、世界の先頭にたって輝いていた太陽が、脆く音をたてて壊れていく。
壮大な夢と、希望と、名声に満ち溢れたお前の世界は、腹がよじれるほど愉快な音をたてて崩れちまった。
王。
たった、その地位に縛られて、巨大な悪ってヤツを動かした結果がコレだ。
お前はずっとその為に空を仰ぎ続けて、ただ馬鹿になってまで夢を見て、希望に打ち震えていたのに。
お前は輝かしい未来を誰よりも確実に両手に抱えていたはずなのに。
稀有に輝いていた黄金の髪も、身体も、赤く染まって無様になっちまっている。
滑稽じゃねえか。おい、なぁ。
王になるどころか、無様じゃねえか。なぁ。
壮大な夢も、希望も、名声も、お前の愛する一族の願いも、お前自身の願いもすべて終わりだ。
こんな簡単に崩れちまうモンだったんだ。
そう思った瞬間
なんだか 長いこと捨てていた何かが、溢れ出ちまった。
叫んだ。
お前の縋る姿に、追い込まれた姿に、絶望した。
呪文を唱える瞬間、忘れていた涙が溢れた。
リオウ!
叫んだ。
今まで馬鹿にしたり、からかったり、浮かれながら読んでいたお前の名を。
祈りにも似ていた。
(愚かだ!)
(神は、人間に越えられてしまったからこそ、世界を放棄して見守る事しかできなくなったのだ)
(役立たずな存在なのだと、痛いほどわかっていたはずなのに!)
リオウ。
リオウ。
俺の身体なんて知るかと、初めてそう思った。
お前を消さないでくれと、初めてそう願った。
リオウ。
叫んだ。
ただひたすら、祈りに似ていた。
祈りは届かずお前の存在はあっさりと簡単に消えた。
俺は、もう涙すら零さず、ただ血に染まったお前の残骸を抱きしめて、
もう一度、この世界に存在する神を殺した。