年齢制限ではありませんがBL描写があります。
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ツァオロンは一見、酒の類に強そうに見えるが、実のところはそれほど酒豪ではない。
むしろ、数杯程度しか飲めないぐらいだから、苦手と言ってもいいだろう。
実際、ツァオロンとて酒自体は別に好んでもいないし、無ければ駄目だというわけでもない。
なのに、ツァオロンが大した量の酒を飲めない事を知っていながら、いつも玄宗はツァオロンを酒盛りに誘う。
やや強引に。
その日もそうだった。
ふらふらと一人でどこかに出かけていった気紛れな男は真夜中に足音を潜めるなどという配慮など全く無い様子で突然帰ってきて、熟睡していたツァオロンを丁寧とはいえない仕草でたたき起こしたと思ったらいきなり、
「酒盛りしようぜ」
という台詞を吐いたのだ。もちろんツァオロンは拒否した。
(何故って、今は真夜中でしかも起きぬけのツァオロンはとてもじゃないがそんな気分ではなかったし、第一、ツァオロンと違って信じられないぐらいの酒飲みである玄宗にいちいちつきあっていたらとてもじゃないが身が持たないからだ。)
だが玄宗はツァオロンの意見などどうでもよかったらしく、
「俺がしたいからするんだよ。いいから付き合え」
と強引にツァオロンを酒盛りに引き込んだのだ。
…そして今の状況は完璧におかしい。
ツァオロンはふらつく思考の中で苦々しげに呟く。
まだ意識が覚醒していない時に、一気に酒をあおったせいでツァオロンは完全に酔っていた。
普段、冷静に思考を働かせている瞳は危なさ気に中空を漂ってるし、完全に呂律が回っていない。
「だぁか、ら、その、笑いが腹立つと、言っている。だから、ゾフィスが、いつも、俺を呼び出すんだ」
…しかも言っている事が支離滅裂の上、普段からは想像もつかないほど感情の起伏が表情豊かだ。
ヤバイ、いつもより飲みすぎた。今更そう後悔してもまさに後の祭り。
完全に、ツァオロンはいつもならば鉄のように持っている理性を失っていた。
そんな、普段ならば絶対に拝めないようなツァオロンを見て玄宗は心底愉快そうに笑っている。
楽しむだけにしては多少のいやらしさとからかいを含んだ視線で。
しかし、それがツァオロンの微妙な精神を刺激したらしい。
「…だ、から!!それって、言ってる…だろ…」
ドン、と半分以上空になった酒瓶を乱暴な仕草で机に置くと、完全に座った目で玄宗を睨みつける。
…正直、全く威力はない。
「お前もまだガキだったんだな。そういえば」
反省するところか玄宗はそんな台詞を吐いて、その上ツォアロンの髪の毛をぐしゃりとかき回す始末。
ツァオロンは完璧に己をからかっているとしか思えないその行動に、ますます眉間に怒りの感情を寄せて五月蝿い、と鋭い声を返した。
玄宗は益々面白そうに声をあげて笑うと、何を思ったのか突如ぐい、とツァオロンを引き寄せた。
怒りに頭が回っていたせいで隙が出来ていたツァオロンは玄宗に傾ぐ。揺れる視界で見えたのは、つり上がった口角。
近付いたツァオロンの顎を玄宗は無骨な指で器用に掴むと、逃げ場を奪う。
そのままの勢いで、到底優しいとはいえない仕種でツァオロンに口付けた。
「―――――――」
酔っていたせいで咄嗟に反応が出来ず、また、普段ほどの理性もなかったせいか。
ツァオロンはひどく大人しくそれを受け入れてしまった。
「―――っ、んっ、ぅ」
好き勝手に口内を荒らされて、侵入される。
―――ツァオロンは自分の都合で好き勝手に己を束縛したり簡単に背を向ける男を、いつも通りこの時も憎いと思った。
思いつつ、ツァオロンの瞳は、腕は、身体は、抵抗をしない。
半端じゃない力を使って、このつかまれた腕を振り解いてひとつ蹴りをいれれば決して逃げられないわけじゃないのに。
―――くそ。結局、甘いのは俺だ。
苦々しげな思考を浮かべたツァオロンを全て絡め取るように玄宗はますます深い口付けを落とす。
お互いの唾液が混ざり合って、ツァオロンの理性がゆるやかにほどかれた頃、ようやく玄宗は唇を解放した。
「―――はっ・・・ぁ、」
ツァオロンは僅かに乱れた息を整えるため、一度大きく酸素を吐き出すと、小さな声で「酒臭い」と呟いた。
まだ口内に残る濃厚な匂いはもはや玄宗のものか己のものか判別はつかない。
苦々しい顔をして口元を抑えると、目の前でやはりまだ笑う男を見上げる。
「いきなり・・・何のつもり、だ」
ツァオロンは更に続きの行為を成そうとする玄宗の手をつかみ、見下ろしてくる瞳に負けじと睨み返した。玄宗は相変わらず愉快そうだ。腹の底からそのまま機嫌を押し出すような声で、耳元で呟く。
「さぁなぁ」
飄々としたその台詞に、ツァオロンは玄宗とは対称的な表情を浮かべて視線を上げる。
頭上の瞳を覗き込んでも、あるのは昏々とした黒と、強い威力をもってツァオロンの脳髄を貫く光だけしかない。
酔って、理性の働かない今の体には、その威力はまるで猛毒のような効き目がある。
ツァオロンは身体の奥底から生まれ、押さえ切れないまま溢れてきた熱を持て余すように、瞳に宿した。
くそ。
だから酒は好かないんだ。いつもよりたくさんのものが溢れてしまいそうになる。
いつもなら絶対にお前に見せないものだって簡単に出てきてしまうから嫌なんだ。
そこまでどうせお前は考えていないだろうが。
多分、自分が楽しむためだけにいちいち俺を相手にして遊んでいるぐらいなんだろうが。
ツァオロンは、はぁ、とひとつため息をつくと吐き出した息と共に理性を捨てる。
どうせ酔ってしまっているのだ。中途半端に抵抗だけするのも馬鹿みたいだ、と潔いほどの思考を持って、玄宗の腕を掴んでいた指を離すと、ツァオロンは代わりに相手の広くて厚い背に腕を回す。
珍しく抵抗がないツァオロンを面白がっているのか、それとも酔っているツァオロンが愉快なのか。
どちらにしても腹立たしいに違いない笑みを浮かべて、玄宗はしなやかな体躯を押し倒した。
それが合図、後は溺れるだけか。
熱に浮かされた中で、ツァオロンはそれだけを冷静に思うと、後は一切を放棄した。
酔っているのは酒にか、この男にか。
どっちみち、溺れている事に変わりはない。
あー…また恥ずかしい…ものを…。
大丈夫、ちゃんと注意書きはしたので、興味を持った方しか読んでないはず…はず…。
それにしてもまともなターコイズも書かなければとふと思います。
でも沸いた頭を持っているのでどうなることやら(笑)