ぽん、と涙が見えないように顔を伏せて、溢れようとする涙を必死に堪えていたツキタケの前に、それは突然現れる。
小さな、小さな、淡いピンクのコスモスである。きっと、道端に咲いていたのだろう。
誰の手の介入も受けず力強く咲く花が、今はツキタケの目の前にあった。
一輪だけだけれども、突然姿を表した花に驚いて、ツキタケは思わず顔をあげた。
「、と、どろき」
目の前には、いつもの柔らかい微笑を浮かべた轟が、膝を折ってツキタケの位置まで顔を下げて居た。
その手に小さな淡いピンクのコスモスを持って、ツキタケの眼前に差し出している。
轟がとってきたのだろうか?
「・・・・・・どうしたの?コレ」
詰まる鼻をすすりながら、小さな声でコスモスを指差して問うツキタケに、轟は優しく笑ってそれをツキタケへ差し出した。
「坊ちゃまが前に好きだといっていたでしょう?」
そういって、ツキタケの右手をそっとつかんで、ひらり、とその手のひらにのせる。
「どうぞ、坊ちゃま」
ふわり、と優しい仕草でツキタケの手のひらに着地したコスモスは、春風で身を震わせた。
轟はそれよりもずっとずっと優しい笑顔で、ツキタケを見上げる。
ツキタケは、視線を降ろして、自分の手のひらにのせられたその花をしばらく見ていたが、やや間をおいて、小さく
「…ありがとう」
と呟いた。
轟はその言葉に、花もほころぶ様な嬉しそうな笑顔で、
「坊ちゃま、一緒に帰りましょう」
と手を差し出す。
ツキタケは気恥ずかしそうに、ゆっくりと小さな左手で轟の右手をつかんだ。
反対の右手には、貰った花を、潰れないように大切に持って。
一人で泣かなくてもいいんですよ。
轟にはまった当初に書きました。…今見るとあっちゃー…なんですが…(苦笑)
でも白い轟も好きなんです。でも今はもうここまでのものを書ける気がしないので載せました。ううむ。
轟…幸せになってくれるといいなぁ(願望)